無料 Web漫画 コミック 胎界主

無料 Web漫画 コミック 作品 胎界主

未完の大作プラモデル

 
ロシアの文豪、ニコライ・ゴーゴリは
未完の大作『死せる魂』第二部以降を
下男が泣いて止めるのもきかず
暖炉に放り込んでしまったという。
ゴーゴリの苦悩は、俺ごときには計り知れないが
その心理、少し分かる気がする。

俺がそのプラモデルを
頭の中の郵便局から受け取ったのは
中学一年生の時だった。

段ボール一杯につまった、数千パーツからなる見た事もないモノで
設計図はもちろん、
全体像を想像させる高荷義之画伯のボックス絵すらなく
おまけに『ロボダッチの頭部』やら『ゲルググの足』やら
関係のないパーツも混じったややこしい代物。

初めは気楽に、趣味程度に面白くやってたが
やってもやっても終わりが見えず
さらに『部品組み立ての技術』『塗装技術』
『未完パーツの加工技術の習得』と
課題が山のように積み上げられ
やっと終わりが見えてきたと思ったら
頭の中の郵便局から追加パーツが着払いで届き
今まで造ったパーツの八割は『いらんパーツ』だから
破棄するようにという指示があったりして、うんざり。

しかし、ここまでやって、やめるにやめられず
また、頭の中はこのプラモのことが常に気がかりで
その為何やっても、いまいちのめり込めず
他人の話も上の空で万事がトカトントン。
傍からみたら、年中得体の知れないプラモをいじってる阿呆だが
実際そうだったから仕様がない。

中崎たつや先生の漫画に、修学旅行先で遺体を発見した少年が
以後、チークダンス踊ったりするも、一人楽しめないっていう漫画があったけど
(うろ覚え)まさにそれで、現実世界のイベントにいまいち乗れず
回避コースを選択してはプラモいじり。
気がつけば、人生で一番面白おかしい青春期が終了していた。

息抜きに楽しむ娯楽すら、
『部品組み立ての技術』『塗装技術』『未完パーツの加工技術の習得』などの
『お勉強』(他人からみると遊んでるようにしか見えない)であり、
世間ではこういう人は「幸せの国の住人」として
生暖かい目で見られるわけだが
心情的には『コイツにはほとほと参ってるんだっ
なんとかしてくださいよブラックジャック先生ぇ』状態。

その取り憑かれようは、ペンネーム地獄の比ではなく
というか、あのペンネーム一つ考えるのでも、
この壮大プラモの小さなパーツのひとつだったりと……って何の話だよコレ?

喩えが下手ですみません。
かくゆうこのWeb漫画のコト。
創造病の話。

俺がなんでこんなややこしい大長編を描いてるかというと
飯の種にしたいだとか、読者様に楽しんでもらうのが好きだとか、
純粋に描くのが楽しいとか。もちろんそれもあるけど
一番の理由は創造病。

自分の腹を割いて、鏡ごしに寄生虫を摘出する
ブラックジャック流外科手術。

コイツを摘出しないと俺は現実世界で何も楽しめない。
そして見てみたいから。このプラモ、Web漫画の完成体を。
またミヒャエル・エンデがそのエッセイの中に書いているように
完成させない限り、この悪魔から解放されないということ。
しかも、適当に作り上げてもダメで
失敗した場合、永遠に解放されないということ。

そう、未完の大作を暖炉に放り込んだ
ゴーゴリのように……。

それでもやはり、ゴーゴリの苦悩は計り知れなかったと思うが
実は俺みたいなの、増えてるらしい。
最近の編集部には
コレ完成させんのに何十年かかるんだっていう壮大な原作の持ち込みが
増えてると、本の記事で読んだ。

ブラック業苦。
 
 
広告