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知らない人に道端で金を貸す(その2)

 
「二千円でいいんですか?」
このとき所持金は五千円。
俺はサイフから、千円札二枚をとりだしました。

この時、俺を魅了したキーワードは二つ。
『ケーキ』それと『娘』
『息子の車』といわないところが、敵のやりやがるところでした。
俺の脳に「父がお世話になりました」って感じの
娘映像が浮かびました。
にしてもお前、たかが『ケーキ』と『娘』につられて金貸すか?
普通は貸しません。
しかし、砂漠で水。海外で会う日本人。路上でケーキプレゼンツ。
突発的出来事(トラブル&ハプニング)においては
普段何でもないものが輝いてみえるんですな。

敵は二千円を受け取り、俺はサイフをしまおうとする。
「あっ、やっぱりタクシーで帰りたいんで、
もう千円お願いします
このタイミングとこの金額の妙よ。
千円でございますよ。
おっ!さっきの半額やん。一枚やん。安いやんって。
あの野郎ぉ……ちょっとしたお得感も計算してやがったんですね。
「じゃあ、もう千円」

もう90%騙されてて、それに気がついてないんですが
のこり10%腑に落ちない信号があったんで
「え?まさかコレって
寸借詐欺とかじゃないですよね?ハハハ」
って一応、冗談まじりにききました。
敵は『滅相も無い』って笑みを浮かべ、さっと立ち去りました。
俺も安心して歩き出しました。

『アレ?今のハナシなんかおかしい』って思ったんですが
振り向きませんでした。
だって、もし後ろを見てオジサンが走って逃げてる姿を見てしまったら……。
その場で砕け散る
『オジサンの笑顔』『感謝ケーキ』『娘のお礼』『俺の善意』
だいいち、追いかけるコトできますかソレ?
追いついた時に金かえせコラァって襟首つかめます?

『どうか、三千円が返されますように』
初詣から帰り、五時を待ちました。

しかし、冬の五時といえばもう薄暗いです。
誰が誰やらわからない黄昏時ですよ。
『あ……これは無いかもしれない』
しかし、とにかく行きました。
だって三千円はともかく俺は食べたかったんだよ!『感謝ケーキ』を。
『もうさ、三千円はいいからケーキだけでも持ってきててくれ』
って心境で。

案の定ソコには誰もいませんでした。
念のため30分は待ちましたが
日は没して真っ暗だし寒いしつらいし帰りました。

以上です。
読んだ方は俺がとんだ阿呆にみえると思いますが、言わせて下さい。
貸すって!
同じ目にあったらアナタも絶対貸しますって!
 

知らない人に道端で金を貸す(蛇足)

改めて読み返すと単純に
あのオジサンは金を返そうと思ってたけど、疲れてそのままコタツで寝ちまって
起きたら5時を過ぎてたってだけかも。
ウ〜ム……俺にはあの時、古畑任三郎で鈍器で後頭部を殴りつける時に流れる曲
♪ティパパッ ティパパッ ティパパッ ティパパッ ティティティィ〜ン
ってのが聴こえたんだが。
幻聴か。